スティーブンショアの代表的な写真集「Uncommon Places」とは

Photo & Camera

「スティーブン・ショア(Stephen Shore)」
写真を始めてそんなに経っていないけれど、一度はその名前を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

スティーブンショアの代名詞ともいえる名作のひとつ「Uncommon Places」を読んだので、今回はその話です。

スティーブン・ショア(Stephen Shore)について

スティーブン・ショア(Stephen Shore 1947年~)はアメリカ・ニューヨーク生まれの写真家。幼少の頃から写真を撮り始め、なんと14歳のときには二ューヨーク近代美術館(MoMA)の当時の写真学芸員だったEdward Steiche(エドワード・スタイケン)に3枚の写真作品を購入してもらうことに成功します。
また10代で、画家のアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)に出会い、ウォーホルのスタジオであるFactoryに出入りして刺激を受けるとともに、ウォーホルと彼を取り巻くクリエイティブな人々の写真を撮り始めました。
1971年にはニューヨークのメトロポリタン美術館で写真家として初の個展を開催。
その後、ショアはロードトリップに乗り出し、アメリカ特有の風景を収めたフォトダイアリーを制作します。それまでは写真作品として認められていなかったカラー写真を作品に使用したことから、ウィリアム・エグルストン(William Eggleston)等とともにニューカラーの代表的写真家の1人として高い評価を得ました。

大判カメラでとらえたアメリカンランドスケープ「Uncommon Places」

スティーブンショアをニューカラーの写真家として決定づけたと評される一冊が「Uncommon Places」という、70年代アメリカ各地の風景を収めた大判カラー作品。

手に取るとまず驚くのはそのサイズ感。横幅30cmを超える冊子に8×10(20.3×25.4cm)より一回り大きいサイズの写真が掲載されています。

そして注目すべきは、「Uncommon Places」の写真のほとんどが8×10(エイトバイテン)のフィルムで撮られているということ。
大判フィルムカメラを使用したことがある人なら、何気ないような街の写真1枚を撮るのがどれだけ大変で繊細なものか想像がつくはず。三脚を据えて、その上に大判カメラを乗せてB5サイズくらいあるシートフィルムを装填。ルーペを使いながらピントを合わせてようやくシャッターをきる。(実際にショア様がこんな風に撮っていたかはわからないけど、まあ、およそ間違ってはいないでしょう。)
ちょっとずらしたい、少し構図を変えたいなんて思ったときも三脚ごと動かす必要があったりと、35mm判のカメラと違って、大判カメラは何かと手間がかかります。

目の延長のような35mmを扱うのと違い、大判のカメラを使う場合、あらかじめ頭の中で画を完全に作り上げておかないと撮れないからです。私の場合、セッティングの前にはすでに写真が決定してるのです。

BRUTUS(ブルータス) 2019年 8月1日号 No.897 [決闘写真論] ー P21

大判カメラのセットには時間がかかるが、セットしている間に瞬間を逃すことはないか? といった質問に対する答えです。かっこいいですね…

この発言を踏まえて、あらためてUncommon Placesの写真を見ると、画の緻密さに驚かされます。もちろん四隅が変に見切れているなんてことはなく、人の配置、電柱、車、看板…いろんな要素が丁寧に整理されていて「うわっ、整ってるなぁ・・・」なんてため息がでるような感動を覚えます。

彼が撮影した交差点の写真には、フリーズした劇場のワンシーンのように見え、幕が上がり俳優たちが舞台を動き回る前の、期待に満ちた瞬間をそこに感じることができる。

IMA「現実の瞬間を超える写真とは?スティーブン・ショアの軌跡を振り返る」

本当に、このような一文が表すような写真ばかりなのです。

まとめに代えて。もう一冊、気になるのは「American Surfaces」

Uncommon Placesが撮られるようになったきっかけは、「American Surfaces」という作品の制作中に出会ったものをより深く追求したいという想いによるものだそうです。車やモーテル、ダイナーでの食事などの日常的な被写体が全て、コンパクトカメラ「ローライ35」で写されています。

http://stephenshore.net/ より

日常言語のような写真とするべく、スナップショットサイズの大きさでまとめられたプリントたち。「Uncommon Places」の対をなす写真集として気になっているものの、なかなか販売在庫(かつ価格もそれなりに適正なもの)も少なく手にできていなくて気になっています。

なにはともあれ、カラー写真をやるなら、ショア氏の作品は一見の価値ありです!

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▼ちなみに、僕の大判カメラ体験記はこちら

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