こんにちは、ペンと写真です。
今回はお気に入りの写真集の紹介です。
もう、これはコロナ禍に出会った傑作の写真集ではないかという感想です。その写真集というのが竹沢うるま氏の「Remastering」です。
Remasteringはどんな写真集?
竹沢うるま氏が、2005年から2020年までに世界各地で撮影した「日常」のスナップ写真が約200点も収録された写真集です。
世界各国を旅して撮影する竹沢氏にとって、コロナ禍は本来のスタイルで撮影することを許されない苦しい期間。氏はこの時間について「これまで当たり前だと思っていた「日常」が次々と失われ、世界が混沌としていく。その様子を眺めるしかない窮屈な時間。」とも述べています。
何かひとつでも生み出すことで、一年を本当の意味で失われたものにしまいとして出版されたのが、この『Remastering』という写真集。失われた日常を集めて本の中に世界を再構築するという想いが込められているそうです。
込められた想いのとおり、本を開くと世界各国の日常を写したスナップ写真がぎっしり。写真の掲載数は約200点もあり、見ごたえも十分です。ただ、どの写真もアクが強くなく、ゆっくり読み進めていっても疲れません。爽やかで、どこか、記憶に呼びかけてくるような雰囲気のものばかり。その理由は、ハイキーな明るさで、うっすらとグリーンがかったフィルムライクな写真になっているからでしょうか。フィルム写真のトーンが好きな人にとっては、お気に入りとなるような写真がたくさん詰まっていると思います。
ページをめくるたびに、竹沢氏がこれまで見てきた日常が愛おしく、また、「世界にはこんな日常風景があったんだ」と多くの発見にも出会えます。
竹沢うるま氏について
1977年生まれの写真家。ダイビング雑誌のスタッフフォトグラファーを経て、2004年より独立、写真家として本格的に活動を始められました。世界各地を旅して写真を撮り続け、訪れた国は150超。
主な著書に、2010年~2012年にかけて1021日103カ国を巡って生まれた写真集「Walkabout」と、対になる旅行記「The Songlines」があります。
また、2014年には第3回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリも受賞された、世界的に評価されていらっしゃる方です。
公式サイト:https://uruma-photo.com/
まとめ(コロナ禍にクラウドファンディングで生まれた傑作写真集)
この写真集の面白いもう一つの点は、クラウドファンディングによって制作されたところです。
コロナは、写真家にとっての表現の場である写真展や出版も大きな影響を与えました。そんな状況下で竹沢氏は、タイムリーかつストレートに今の心境を表現するために、思い通りの編集ができて短期間に発刊できるクラウドファンディングが適していると考えられたようです。
クラウドファンディング開始早々に目標額の100万円を達成し、最終的には目標額の約4倍近い額が集まったそう。
コロナ禍にさまざまな行動が制限される中でも、何かを生み出そうと試行錯誤の結果できた写真集。掲載された世界の日常の写真は、ただの回顧に終わってしまうようなものではなく、明るく、前向きで、希望に満ちた日々がまたやってくると思えるようなものです。
まさにコロナ禍における傑作写真集ではないかと思ったのです。