『白』の感想

Lifestyle

「白があるのではない。白いと感じる感受性があるのだ。」

哲学的な一文から始まるこの本のタイトルは『白』。表紙は白く、帯も白い、もちろん1ページ1ページの紙も白く、その「白」にもはや美しさすら感じてしまう。

存在しているようで存在していないようで、存在している「白」。この本を読むまでは「白」というもの、「白」の意味をこれほど考えされられることはありませんでした。

今回紹介するのは、原 研哉 著『白』という本です。

著者 原 研哉 氏について

偉大な人すぎて「氏について」なんて文章を書くのもはばかられるのですが、一応。

1958年生まれのグラフィックデザイナー。日本デザインセンターの代表を務めていらっしゃいます。

有名なところで、無印良品のアートディレクションや蔦屋書店の総合ディレクションを担当された方です。また、長野オリンピックの開・閉会式のプログラムや、2005年愛知万博公式ポスターの制作を担われたほか、世界各国で数々の賞も受賞されています。

手掛けられた広告を眺めると、それらは単に「シンプル」という言葉で留めることはできない、「美しさ」を感じられるものばかりです。

HARA DESIGN INSTITUTE WEBサイトより

「白」をここまで深く見つめたことがあっただろうか

この本は以下の内容で構成されています。

=目次=
第1章 白の発見
白は感受性である/色とは何か/いとしろし/色をのがれる/情報と生命の原像
第2章 紙
いとしろしき触発力/白い枚葉として/創造意欲をかき立てる媒質/反芻する白/白い四角い紙/言葉を畳む/文字というもの/活字とタイポグラフィ
第3章 空白 エンプティネス
空白の意味/長谷川等伯 松林図屏風/満ちる可能性としての空白/伊勢神宮と情報/何も言わない/白地に赤い丸の受容力/空と白/茶の湯/和室の原型/発想は空白に宿る/創造的な問いに答は不要
第4章 白へ
推敲/白への跳躍/清掃/未知化/白砂と月光

色の不在を示す「白い」という言葉は、「いとしろし=いちじるし」という顕在性を表した言葉に由来しているということから導きだされる「白」の本当の意味。
紙はなぜ白いのか。「空白」としての白。神社や日本国旗、千利休の茶の湯に込められた、「満ちる可能性」としての「空白=白」。

この本を読み進めると、歴史や文化の中で実は「白」と深く関わりながら生活していることに気づかされるとともに、白を美しいと感じるその根源に触れることができます。これまで無意識に見ていた(あるいは見えていなかった?)「白」の存在感を感じられるようになります。

まとめ(東大の試験にもなった良本)

この『白』という本の一節は、2009年東京大学国語の試験問題として使われたほか、高等学校国語教科書(三省堂)にも載っているほどの良書です。

デザイナーが執筆した書籍ということで、デザインに関することばかりの内容かというと、そうでもない。デザイン業などに関わりの薄い人にとっても、日本文化を知るヒントだって得られる本です。ぜひ、ご一読してみてください。

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