先日、季刊雑誌「GENIC vol.61」を読みました。
本号のテーマは『伝わる写真』。約60名のフォトグラファーの写真作品を集め、「愛が伝わる写真」「伝わるクリエイティブ」「五感を刺激する写真」といった特集で、それぞれのフォトグラファーが“伝える”ために何をどのように撮っているのという、考え方やテクニックが紹介されています。
伝えるためのテクニックがわかるだけではなく、「そもそも良い写真とは何か」という問いのヒントになるような内容でもあり面白かったです。
そんな「GENIC vol.61 」を読んで、今回は「伝わる写真」&「良い写真」についてあらためて考えてみました。
良い写真とは目的を伝えられる写真
皆さんにとって「良い写真」とはどんな写真でしょうか。
・部屋に飾りたくなる写真 ・みていて飽きない写真 ・パッと明るい写真 ・ライティングがしっかりした写真 ・構図がしっかりした写真 ・色がとてもうまく表現されている写真
などなど、どれも正解だと思えるし、他にもまだまだ正解となるような意見が出てきそうですね。
そんな中で、今回あらためて至った結論がこちらです。
目的を伝えられる写真、目的が伝わる写真が良い写真
「映画が好きで、映画のポスターのような写真を意識して撮っている。」「一歩引きながら、見た人がクスっとなってもらえるような家族の日常を撮っている。」など、GENICには、各フォトグラファーがどんなテーマをもって、どんなスタイルで撮影しているのかといったインタビュー記事も載っています。皆さんテクニックがあるから良い写真を生み出せているわけではなく、「何を」「どのように」伝えたいのか、見た人にどう思ってもらいたいのかといった目的が明確になっているんですね。
写真は、自分が見たものに対してどう思ったのかを、カメラを使って二次元の画にされたアウトプットです。
自分の想い、共感してほしい部分、その写真の目的が見た人にちゃんと伝わること。そのコミュニケーションが成立する写真が良い写真ではないかと思います。
GENICに掲載されている写真についても、目的やテーマがはっきりとしたものばかり。
撮り手にとっての「目的・テーマ」がはっきりと自覚されているから、それが見る人にも伝わってくる。その「目的・テーマ」について共感できるものだと、「良い写真だなぁ」とついつい心に呟いてしまいます。
「良い写真を撮る」ということは、目的や意志を自覚して、それらを伝えるため必要な手段を選んで撮ることではないかと思ったわけです。
良い写真を撮る(実践編)
先日、白背景で白い卵を撮りながら遊んでいた時に撮った写真。卵から連想される「誕生」という言葉を表現できないかと考えました。「誕生」を表現するために、ライティングやら色々と試しながら撮影してみました。
半逆行で撮影してみると、すこし幻想的な印象に仕立てられて「何かが始まる」そんな様子にできたと思います。でもなんだか物足りないので、もう少し試行錯誤してみます。
トップ+逆光で撮影してみました。卵にスポットライトが当たって、グッと卵への視線誘導ができました。そして幻想的な様子もあります。先ほどの半逆行のものよりしっくりときました。
でも、「誕生」感はまだまだ湧きませんね。
そこで、卵自体に変化を加えてみました。
卵にひび割れを加えることで、一気に「誕生」感が湧きました。というか、もう生まれそうですね。ちなみに、卵を置く角度も変えました。卵を少しだけ立ち起こすことで、卵自体が動いている様子を表現してみました。
ここに、先ほどのトップ+逆光のライティングを加えると・・・
最初の写真と比較してみると・・・
被写体と背景は全く同じなのに、まったく別の画になっているかと思います。完成した写真だけをみて、「誕生を表現する写真だ」と思ってくれる人がどれだけいるかは未知数ですが、最初の写真よりかは、明らかに伝わる写真(良い写真?)になっているかと思います。
※撮影の基礎知識としてライティングについても過去の記事で紹介していますので、よかったら見てみてください。
まとめ 良い写真は伝えられる写真
あらためて、「良い写真とは?」と聞かれたときの僕の今の答えは、「目的を伝えられる写真、目的が伝わる写真」です。
目的や意志を伝えられる写真、コミュニケーションを成立させられる写真。コミュニケーションを成立させるために、光の当て方や色の出し方、構図の作り方を考える。「黄金比に合った構図だから良い写真!」とかではなく、それはあくまで、良い写真を作るための一つの方法であるということ。こんな感じです。
さいごに、GENIC vol.61は様々な写真家の作例が一同に集まっていることもあり、自分の撮影の引き出しを広げてくれるような内容にもなっていて面白かったですよ。